白髪はなぜ生えるのか
白髪の発生に関与する遺伝・ストレス・加齢の3つの要因と、進行が一定ではなく加速する時期があることについて整理します。
白髪に関与する3つの要因
白髪の発生に関与する要因は、遺伝・ストレス・加齢の3つに大別されます。
この3つは性質が異なります。遺伝は発症時期を規定し、生活習慣による変更は困難です。ストレスは、後述する機序により不可逆的な変化をもたらします。加齢は避けられないものの、進行の速度には個人差があり、その差を生む要因の一部は特定されています。
以下、それぞれについて現在わかっていることを整理します。
遺伝:発症時期を規定する
白髪の出現時期には、遺伝的な個人差が強く関与します。親や祖父母が20代から白髪であった場合、同様に早期から出現する傾向が見られます。一方、家族に白髪の少ない場合は、40代以降も目立たないことがあります。
これは色素細胞の機能に関わる遺伝的な個人差によるもので、生活習慣による介入の余地は限られます。
ただし遺伝が規定するのは主に発症の時期であり、その後の進行速度をすべて決定するわけではありません。同時期に白髪が出現した場合でも、その後の増加の仕方には差が見られます。ここには以下に述べる要因が関与します。
ストレス:色素幹細胞の枯渇
強いストレスと白髪の関連は経験的に語られてきましたが、2020年、ハーバード大学の研究チームによってその機序がNature誌に報告されました。
報告された経路は次の通りです。強いストレス下では交感神経が過剰に活性化し、神経終末からノルアドレナリンが放出されます。このノルアドレナリンが毛包内で待機している色素幹細胞に作用し、刺激を受けた幹細胞は急速に増殖・分化したのち毛包外へ移動します。結果として幹細胞のプールが枯渇します。
ストレスによる白髪化は、細胞の機能低下ではなく細胞の消費によって生じていることになります。
この研究では、免疫系および副腎皮質ホルモン(コルチゾール)を介さずにこの現象が生じることも確認されました。ストレスホルモンではなく、神経系が直接関与していたことになります。あわせて、枯渇した幹細胞プールは回復しないことも報告されています。
臨床の場でも、生活環境が大きく変化した時期、介護や看病が続いた期間、長期の業務負荷がかかった後などに白髪が増加したという申告は少なくありません。いずれも数年単位ではなく数ヶ月単位の変化として自覚される点が、報告された機序と符合します。
加齢:速度に個人差がある
加齢に伴い、メラノサイト(色素細胞)の数と機能は低下します。これ自体は避けられない変化です。
一方で、その速度には個人差があります。同年齢でも白髪がほとんど見られない場合と、頭髪の半数近くが白髪である場合があります。
この差に関与する要因のひとつが酸化ストレスです。メラノサイトは活性酸素の影響を受けやすい細胞であり、酸化ストレスの蓄積によって機能が低下します。酸化ストレスを増加させる要因としては、紫外線、喫煙、睡眠不足、過度の飲酒、栄養の偏りなどが挙げられます。
もうひとつ、加齢では毛包そのものの萎縮も進行します。メラノサイトは毛包という組織の内部で機能しており、組織自体が衰えれば細胞の機能も低下します。髪が細くなる、コシが失われる、分け目が広がるといった変化と白髪の増加は、同一の部位で並行して進むことが多く見られます。
進行の速度は一定ではない
白髪は年齢に比例してなだらかに増加するものと受け取られがちですが、実際の進行は一定ではありません。特定の時期に急速に増加する例が多く見られます。
診療の場で聞かれる訴えには、次のようなものがあります。
- 前年まではほとんどなかったが、この1年で明らかに増えた
- 側頭部が短期間で白くなった
- 半年前の写真と比較すると差がはっきりしている
なだらかな曲線ではなく、階段状の変化として自覚されます。
この加速には二つのパターンが見られます。
ひとつは20代から30代前半に生じるものです。遺伝的要因を持つ場合に多く、出現後の進行が速いという特徴があります。数年をかけて徐々に増加するのではなく、1〜2年で目立つ量に達することがあります。
もうひとつは30代後半以降に生じるものです。加齢による白髪も均等には増加せず、ある時期を境に急速に目立つようになる例が多く見られます。前述したストレス性白髪における幹細胞の急速な消費が部分的に生じていると考えれば、階段状の変化とも整合します。
進行速度が持つ意味
進行が加速している時期は、毛包内で変化が進行している状態にあたります。したがって、この時期の進行速度がその後の白髪量を大きく左右します。
進行が続いた場合と止まった場合とでは、数年後の状態に相当な差が生じます。白髪の量という観点では、既存の白髪を減少させるより増加を抑制するほうが、結果への寄与が大きいことになります。
当院の白髪治療を受けている方においても、色調の変化より「増加が止まったこと」を主要な変化として挙げる例が少なくありません。
3つの要因は重複する
以上を3つに分けて記述しましたが、単独で作用している例は多くありません。遺伝的素因のある方に加齢と生活要因が重なることで進行するのが一般的です。
当院で白髪治療を受けている方の年齢分布も20代から50代以上に及んでおり、年齢のみが規定要因ではないことを示しています。
介入の余地について整理すると、次のようになります。
| 要因 | 介入の余地 |
|---|---|
| 遺伝 | 発症時期は変更できない |
| ストレス | 状況の変化により進行が止まる場合がある |
| 加齢 | 進行速度には影響しうる |
遺伝的に早期発症する場合でも、酸化ストレスの軽減により進行が緩やかになる可能性はあります。逆に遺伝的な素因が少ない場合でも、生活習慣によって進行が早まることがあります。
白髪の成り立ち
白髪の定義についても整理しておきます。
白髪は、黒い毛髪から色素が失われたものではありません。毛根内でメラノサイトが色素を付与したうえで毛が伸長するため、この細胞が機能しない場合には色素が付与されないまま毛が伸びます。これが白髪です。
したがって対策の対象となるのは既存の毛髪ではなく、これから生成される毛髪です。この点は治療を検討する際の前提となります。
機序の詳細については別記事で扱います。
まとめ
- 白髪に関与する要因は遺伝・ストレス・加齢の3つで、通常は重複して作用する
- 遺伝は発症時期を規定するが、進行速度をすべて決定するわけではない
- ストレスによる白髪化は色素幹細胞の急速な消費によって生じ、枯渇したプールは回復しないと報告されている
- 加齢では色素細胞の機能低下に加え、毛包そのものの萎縮も進行する
- 白髪の進行は一定ではなく、加速する時期が観察される
- その時期の進行速度が、数年後の白髪量を左右する
- 白髪は色素が失われた毛髪ではなく、色素が付与されずに生成された毛髪である
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カウンセリングでは、白髪歴や進行の状態をふまえて個別にご説明します。
参考文献
- Sun Q, Lee W, Hirose H, et al. Dedifferentiation maintains melanocyte stem cells in a dynamic niche. Nature. 2023;616(7958):774-782. doi:10.1038/s41586-023-05960-6
- Zhang B, Ma S, Rachmin I, et al. Hyperactivation of sympathetic nerves drives depletion of melanocyte stem cells. Nature. 2020;577(7792):676-681. doi:10.1038/s41586-020-1935-3
本ページの記載について
本ページは白髪という現象についての解説を目的としたものであり、特定の治療を推奨するものではありません。治療の適応や経過は個人により異なります。
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