白髪治療研究所

白髪は黒髪に戻せるのか

白髪治療には、土台をつくる・進行を止める・色を戻すという3つの成果があります。それぞれ現れる時期も、期待できる条件も異なります。

白髪治療の三層構造実感の時期期待できる方戻す色素産生のスイッチを入れる6ヶ月〜白髪歴が短いほど守る/止める残る色素細胞を酸化から保護する3ヶ月白髪歴を問わない土台をつくる毛包そのものの環境を整える1〜2ヶ月全員3つは働きかける対象が異なり、いずれか単独では成立しない
図1|白髪治療の三層構造
変化が現れる順序1ヶ月2ヶ月3ヶ月4ヶ月5ヶ月6ヶ月髪のハリ・コシ・太さ抜け毛の変化白髪が増えていないこと一部の毛に色調の回復毛髪は月に約1cm。色調の判定には3ヶ月以上を要する
図2|変化が現れる順序
毛包を工場にたとえると土地とインフラ毛包という組織環境が悪ければ工場は動けない工場メラノサイト色素を産生する細胞そのもの指示α-MSHなどの信号「色素を作れ」と伝える役割どれか一つが欠けても、毛髪に色素はつかない
図3|土地・工場・指示
α-MSH系ペプチドの二つの作用α-MSH系ペプチドMC1-R に結合メラニンの産生を促す= 戻す6ヶ月〜/白髪歴によるカタラーゼの発現を高める過酸化水素を分解し細胞を守る= 守る・止める3ヶ月/白髪歴を問わない機序が異なるため、それぞれ独立して期待できる
図4|α-MSH系ペプチドの二つの作用

治療で得られる3つの成果

白髪が黒髪に戻るかという問いに対しては、戻る例はあるが全例ではない、というのが現時点での回答です。

ただし、白髪治療の成果は色調に限りません。実際には性質の異なる3つの成果があり、それぞれ現れる時期も、期待できる条件も異なります。

成果1|土台をつくる 毛包そのもののコンディションを整えることです。毛髪が太くなる、ハリ・コシが出るといった変化がこれにあたります。色調とは別の変化ですが、最も早く自覚されます。

成果2|進行を止める 残存する色素細胞を保護し、白髪の増加を抑制することです。確実性が高く、白髪歴の長短を問いません。

成果3|色を戻す 色素が産生されなくなった毛包において、再び色素が産生されることです。時間を要し、条件に左右されます。

一般に「白髪治療」として想定されるのは成果3ですが、実際には成果1が最初に現れ、成果2が最も確実で、成果3が最も時間を要します。

進行抑制の位置づけ

白髪の増加が続いた場合と、増加が止まった場合とでは、数年後の状態に相当な差が生じます。白髪の量という観点では、既存の白髪を減少させるより増加を抑制するほうが、結果への寄与が大きいことになります。

私自身、この治療を5年継続しています。この間の加齢にもかかわらず、白髪の増加は限定的にとどまっています。一部に色調の回復が見られますが、劇的な変化ではありません。ただし増加しなかったという結果自体の価値は、実感として小さくないものです。

当院で治療を受けている方においても、色調の変化より「増加が止まったこと」を主要な変化として挙げる例が少なくありません。

3つの成果に対応する機序

記事2で述べた通り、毛包は「土地とインフラ」「色素を産生する工場」「産生を指示する信号」の3要素で構成されます。3つの成果は、それぞれ異なる要素に対応します。

土地に働きかける 当院では、α-MSH系ペプチドに加えて、エクソソームや成長因子など、細胞への働きかけに関わる成分を併用しています。これらは色素の産生を指示するものではなく、毛包そのもののコンディションを整える役割を担います。毛髪が太くなる、抜け毛が減るといった変化はここに由来します。なお、これらの成分が白髪を直接黒く戻すことを示した証拠は現時点ではありません。期待できるのは土台の部分に限られます。

工場を保護する メラニンの産生過程では副産物として過酸化水素が発生し、メラノサイト自体を損傷します。通常はカタラーゼという酵素がこれを分解しますが、加齢とともにその働きも低下します。α-MSH系ペプチドには、このカタラーゼの発現を高める作用があることが報告されています。過酸化水素が分解されればメラノサイトは保護され、進行が抑制されることになります。

産生を指示する α-MSHは、メラノサイト表面のMC1-Rという受容体に結合し、メラニンの産生を促すホルモンです。この構造を模したペプチドを用いることで、産生を促すことができます。

複数のペプチドを比較検討している

色素に関わるペプチドは一種類ではありません。作用点の異なるものが複数知られています。

  • メラニンの産生を起動する段階に作用するもの
  • 産生された色素を、メラノサイトから毛髪の細胞へ受け渡す段階に作用するもの
  • 細胞を酸化から保護する段階に作用するもの

色素が毛髪に反映されるまでには複数の段階があり、どの段階が律速となっているかは個人によって異なると考えられます。したがって、単一の成分ですべての例に対応できるとは考えていません。

白髪治療研究所では、作用点の異なる複数のペプチドについて比較検討を継続しています。院内での治療と自宅でのケアのそれぞれについて、構成の検証を進めています。

3つを併用する理由

3つのアプローチは、いずれか単独では十分に機能しません。

環境のみを整えた場合、色素産生の指示がなければ、太くしっかりした白髪が生成されることになります。毛髪の量や質は改善しますが、色調は変化しません。逆に指示のみを出した場合、毛包が萎縮し血流も乏しい状態では十分に応答できません。保護のみでは、既存の白髪は変化しません。

変化が現れる順序

毛髪は1ヶ月に約1cm伸長します。したがって白髪の色調変化を判定できるのは、早くとも3ヶ月後です。

一方、それ以前の期間に変化がないわけではありません。多くの場合、最初に自覚されるのは色調ではなく質感です。毛髪が立ち上がるようになった、一本一本が太くなった、抜け毛が減ったといった変化で、早い場合で1ヶ月程度、多くは2ヶ月前後で自覚されます。

経過 評価できる内容
1〜2ヶ月 毛髪のハリ・コシ・太さ、抜け毛の変化
3ヶ月 根元から3cm分の新しい毛髪。主に、白髪が増加していないこと
6ヶ月 評価範囲が6cm分に広がる。白髪歴の短い場合を中心に、一部に色調の回復が見られる例がある

なお、頭髪の毛周期(成長期)は3〜6年です。3ヶ月・6ヶ月という区切りは毛周期ではなく、新たに生成された毛髪の長さに基づくものです。

再色素化について

かつては、白髪化した毛包では色素細胞が失われていると考えられていました。しかし2023年、ニューヨーク大学の研究チームは、白髪化した毛包に色素細胞の元となる幹細胞が残存している例を報告しました。ただしその幹細胞は毛包内を移動できず、成熟した色素細胞になれない状態で留まっていました。細胞が消失しているのではなく、移動が停止している状態です。この報告が正しければ、再び移動させる方法があれば色素が産生される可能性があることになります。

一方、2020年にハーバード大学の研究チームが報告したストレス性の白髪化では、色素幹細胞が毛包から永久に失われることが示されました。幹細胞そのものが枯渇した場合、働きかける対象が存在しません。

白髪には幹細胞が残存している場合と失われている場合があり、外見からは判別できません。全例で色調が回復するとは言えないのは、この理由によります。

白髪歴と反応性

色調変化の出やすさには、白髪になってからの年数が関係します。白髪歴が短いほど色素幹細胞が残存している可能性が高く、働きかけに応答しやすいと考えられます。年数が長くなるほど、変化は限定的になります。前述のストレス性白髪の研究においても、年齢が可逆性を左右する因子であることが指摘されています。

ただしこれは、3つの成果のうち「色を戻す」に限られます。進行抑制は白髪歴を問わず、毛包環境の改善も同様です。白髪歴が長い場合に治療の意義がなくなるのではなく、期待する成果の重心が変わることになります。

またこの場合、院内での治療の比重が大きくなります。色素細胞が長期にわたり機能していない毛根は、細胞そのものが減少した状態にあり、毛包の環境から立て直すアプローチが必要となるためです。これを行えるのは院内での治療に限られます。

治療の意義が大きい条件

治療の意義が大きいのは、白髪が急速に増加している時期にある場合です。進行が加速している時期に抑制できるかどうかが、その後の白髪量を大きく左右します。

20代・30代前半で白髪が出現した場合は、遺伝的要因を持つことが多く進行が速い一方、白髪歴が短いため色調が回復する可能性も比較的高くなります。3つの成果すべてが期待できる条件といえます。

また加齢では色素細胞の機能低下と毛包の萎縮が並行して進行するため、白髪と毛髪の細さを同時に自覚する例も少なくありません。当院の治療は、この両方に同時に働きかける設計となっています。

想定される変化の程度

実際に生じる変化は、頭部全体が元の黒髪に戻るというものではありません。毛髪が太くなりハリ・コシが出る、白髪の増加が止まる、白髪が細くなり目立ちにくくなる、一部の毛髪が色調を取り戻す。こうした変化が段階的に現れます。

全体が黒髪に戻ることを前提として治療を開始した場合、期待との差が生じることになります。

治療の進め方

当院の白髪治療では、モデルケースとして6回程度の施術を目安とし、あわせて自宅でのホームケアを併用します。回数と間隔は、白髪歴や進行の状態に応じて調整します。

院内での治療とホームケアは、同一の内容を頻度を変えて行っているものではなく、担う役割が異なります。毛包の環境そのものに働きかけられるのは院内での治療に限られ、毎日継続できるのはホームケアのみです。色素細胞への働きかけは、間隔を空けて行うより日々途切れずに継続するほうが効果的です。いずれか一方では設計が成立しません。

現在、治療を受けている方の8割以上がホームケアを併用しています。

なお、色調の変化を確認するには、目安となる回数を終えたのちも継続が必要となることが一般的です。実際に多くの方が継続しています。この点は治療開始前の前提となります。

具体的な回数、間隔、使用する成分の構成については、カウンセリングで個別に説明します。

まとめ

  • 白髪治療には「土台をつくる」「進行を止める」「色を戻す」の3つの成果がある
  • 3つは働きかける対象が異なる(毛包環境/色素細胞の保護/色素産生の指示)
  • 色素に関わるペプチドは一種類ではなく、作用点の異なる複数のものを比較検討している
  • 最初に自覚されるのは色調ではなく、毛髪の太さやハリ・コシで、1〜2ヶ月ほどで現れる
  • 進行抑制は3ヶ月時点から判定でき、白髪歴を問わない
  • 色調の変化は6ヶ月以降で、白髪歴が短いほど期待できる
  • 白髪歴が長い場合も進行抑制と毛包環境の改善は変わらないが、院内での治療の比重が大きくなる
  • 院内での治療とホームケアは役割が異なり、いずれか一方では設計が成立しない

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参考文献

  1. Sun Q, Lee W, Hirose H, et al. Dedifferentiation maintains melanocyte stem cells in a dynamic niche. Nature. 2023;616(7958):774-782. doi:10.1038/s41586-023-05960-6
  2. Zhang B, Ma S, Rachmin I, et al. Hyperactivation of sympathetic nerves drives depletion of melanocyte stem cells. Nature. 2020;577(7792):676-681. doi:10.1038/s41586-020-1935-3

本ページの記載について

本ページは白髪という現象についての解説を目的としたものであり、特定の治療を推奨するものではありません。治療の適応や経過は個人により異なります。

当院の白髪治療は自由診療であり、健康保険の適用対象ではありません。使用する成分の一部には、国内において医薬品としての承認を受けていないものが含まれます。国内の正規取扱事業者を通じて入手しています。白髪の改善を目的として国内で薬事承認を受けた医薬品はありません。使用する成分について、重大な副作用等の報告は確認されていません。未承認の医薬品等を使用した場合に生じた健康被害は、医薬品副作用被害救済制度および生物由来製品感染等被害救済制度の対象外となります。

主なリスク・副作用:施術部位の一時的な赤み、腫れ、内出血、痛み、かゆみ等が生じることがあります。

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